81PRODUCE Presents若手リーディング公演 声瞬-SEISHUN-

感想

81プロデュースに所属する若手メンバーを中心としたリーディング公演。
今回披露されたのは
『猿飛佐助』(著:織田作之助、演出:鈴木清信)
『この握りめし』(著:岸田國士、演出:小山悟)
『ラジオドラマのためのエチュード ひめゆりの塔』(脚色:渡部猛、演出:中尾隆聖)
の3作品。こういった朗読劇というものは参加経験が少ないのでこういうものなのかどうか分かりませんが、個人的には、古典作品、現代劇と、バランスの良い構成だったと思いました。

若手とはいえ、プロの声優、いや、声を扱う役者の皆様の演技。リアルタイムで、また間近で拝見すると、迫力、気迫、感情の起伏等が想像以上にダイレクトに伝わってくるものですね。

また、朗読、リーディングというものは視覚的な情報を排除し、聴覚的情報に終始しているものだ、と勝手に思い込んでいたのですが、演じている役者さんの目、表情、また衣装や立ち振る舞いに至るまで、全てが朗読、リーディングというものを構成していたように思いました。もちろん、あくまで朗読、リーディングであり、演劇のような大きな動きはありません。しかしながら、"マイク前での演技"というものがいかに意味を持つか、初めて思い知らされたような気がします。

声を扱う役者、声優の皆さんを応援していながら、これまでなかなか本格的な朗読というものに触れてこなかったが故に、朗読、リーディングひいては"声の演技"というものの奥深さについて、今日まで知らななかった、考えもしなかった、ということに、自分自身ひとつショックでもありましたね。まったくもって、浅はかだったとしか言いようがありません。

さて、内容については割愛しますが、個人的にはやはり、最後の演目『ラジオドラマのためのエチュード ひめゆりの塔』の印象が特に強かったので最後に記しておきたいと思います。

ひめゆりの塔で知られる"ひめゆり学徒隊"をテーマにした、史実に基づくエチュード。悲劇的なテーマを扱っているが故、涙を拭う場面も多かったのですが、舞台上の役者の方々の目にも、光るものが数多見受けられたことが、一つ衝撃的でした。

各々の役に没頭し、役を演じ、役に自らをリンクさせる。役になりきる、という言い方も出来るでしょう。そういった場面は日々、声を扱う役者、声優のみなさんにとっては日常茶飯事なのかもしれません。しかしながら、我々にとっては、その工程・過程というものを省いた、その結果として生み出された、完成されたものだけを耳にする機会しか、残念ながら与えられていません。

そうであるが故に、涙を目に溜め、自らに与えられた役として、演じる、その迫真の姿をこの目で見ることが出来たことは、声を扱う役者、声優の皆さんを応援している身としては、まさに幸せだったとしか言いようがありません。

定期公演化を、切に願いたいと思います。

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