霧島若歌 ワンマンライブ first recollection

感想

秋葉原CLUB GOODMAN。身動き取れないほどの聴衆で埋め尽くされた会場は開演前から異様なテンションに包まれていた。私自身、この界隈ではわりと勝手の知っている部類に入るので、最前あたりから続く古参ゾーンのすぐ後ろあたり、会場全体では中盤やや前方といった位置に陣取っていた。見渡す限りの笑顔。実に気持ちのいい連中だ。なぜか珍しく今日はそう思えた。そういう空気が確かにあった。暗転して、ステージと客席を仕切っていたスクリーンが上がると、テクノ系のイントロにのせて青いドレスに身を包んだ霧島若歌が颯爽と登場した。申し訳ないが不勉強のため、今回のセットリストの曲名はほとんどわからないのだが、ライブは彼女のオリジナル曲の萌え系POPソングで幕を開けた。最近はあまり歌われていなかった曲だが、これは新規ファン、特にアニメ「アイカツ!」から彼女の存在を知ったファンに向けた選曲だったように思う。おそらく権利問題等で「アイカツ!」の曲は歌えなかったわけだが、それでもそういうゆるいファンに対しての彼女なりの気遣いを感じた。私自身ちょっと順番を正確に記憶していないのだが、数曲アップテンポな曲を続けた後に「Paradise Lost」が流れると場内は最初のピークを迎えた。これは完全に某有名推されオタへの私信のような曲で、最高潮に高まった彼はジャンプポイントで天井に設置されているミラーボールへのタッチに成功した。だからなんだと言えばそれまでだが、その場の誰もがなぜかそれを望んでいた。とても気持ちの悪い(失礼)予定調和だと思うが、彼女の選曲にそのオタが応える、という絶対に必要な儀式だったのだ。その後、途中、謎のパークラ芸人たちの寸劇をはさんで衣装チェンジし、ディアガールのダンサー二人を従えて再登場。「Only My Railgun」のイントロが始まると会場は気が狂ったようなテンションに変わった。さぁ、会場がオレンジに染まる...と思いきや、なぜかほとんどのオタがあの伝説の「はさみ男」氏の独特のオタ芸(http://www.youtube.com/watch?v=EVUxR6UlW90 )を完コピ。これは間違いなく今日のライブのクライマックスだったと思う。こういう気持ちの悪い一体感こそが地下ライブの良さなのだ。(一応、褒めている。)その後の曲では、ダンサーの分かりやすい振り付けが聴衆を先導するシーンがあり、ダンサーがただなんとなく間を埋めるだけの役割ではなく、会場を盛り上げる役割としてしっかり機能していたところはさすがライブ巧者だと感心した。たびたび言うが、私はあまりライブ構成を正確に把握していない。このあたりでバラードが2曲ほどあっただろうか。ひょっとしたらもうすこし後だったかもしれない。とにかく、その後、一度場内の明かりが付いてスクリーンが下がり、休憩時間の後に再び暗転。スクリーンに動画が映写された。ここでも聴衆は謎の一体感で後ろの人にも見やすいように、申し合わせたように前のほうから順にしゃがんで鑑賞。適応力の高さがうかがえた。動画は彼女が映る写真のスライドで、彼女の歴史を遡るように構成されていた。身内受けの写真もいくつかあったようで、私はよくわからなかったが、霧島若歌のキャリアの濃密さを物語るに充分な動画であったと思う。この頃にはすでに私自身汗が滴り落ちるほど汗まみれだったので良いクールダウンになった。スクリーンが上がると、バンドメンバーが現れて、お待ちかねのロックユニットRaWの曲を披露。何をお待ちかねだったかというと、もちろんサビでのモッシュ。去年の同じ頃、モッシュで肋骨を折ったオタがいたこともあってどうなるかと懸念していたが、思ったほど激しくはなかった。程よく羽目を外して良い暴れ方になっていたように思う。バンドサウンドのバランスは、正直なところ良くもなく悪くもなくというコンディションだった。なるべくLR聴きたいので中央に移動してみたが、個人的にはバンドパートの3曲目あたりからギターの音の歪みが大きくなってメロディが聴き取れないほど音像が曇ったように感じた。しかし生バンドのライブではよくあることで、ボーカルが入ってしまえばさほど気にはならなかった。バンドは聴衆を最高潮まで盛り上げ、「Chronus」で締めくくりステージを終えた。聴衆のアンコールに応えて、一人ステージに戻った霧島若歌はオケで名曲「ダイヤモンド・クレバス」を披露。今、思い出しても涙が出る。厳しいことを言えば、この曲は彼女のキーにはあまり合っていないかもしれない。それでもこの曲だからこそ、この歌詞だからこそ、彼女は歌いたかったのだ。我々に伝えたい想いがあったのだ。そう確信できた。基本的には私は、歌は技術が10割と思っているが、気持ちで歌う歌があってもいい、と、この時は思った。再びバンドが戻り「recollect」を再度演奏しすべてのセットリストを終えたが、聴衆はすぐさまダブルアンコールを要求。本当にもう何も考えていない、と断りながらも彼女は本日のラストソングに「リシアンサス」を選び、アカペラで1コーラス披露。このクオリティが凄まじかった。20曲以上を歌いこなしてなお声量と音圧は安定していた。歌うために生まれてきた...と言うと言い過ぎかもしれないが、歌うために生き続けてきた霧島若歌の歴史が詰まった『真っ直ぐ』なライブを堪能することができた。この『真っ直ぐ』というのはとても重要で、演者がブレていないからこそ聴衆はその音楽とパフォーマンスに100%身を委ねることができるのだ。巧い歌手、美しいアイドルは、他にもいるかもしれない。しかしこの『真っ直ぐ』という姿勢において霧島若歌に匹敵するアーティストはそう簡単に見つけられないと思う。私はとにかく楽しかった。私が知る限り、聴衆はとにかく楽しんでいた。その楽しさは、彼女の『真っ直ぐ』な姿勢とそれに応える聴衆を繋ぐ確固たる信頼関係のなかに生まれたのだと思う。とても清々しい余韻の残る素晴らしいライブだった。

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