黒木渚 ONEMAN LIVE 2020 「檸檬の棘」東京公演

イベント詳細

開催日時 2020-02-21 (金)
時間 開場 18:30 開演 19:30 終演 22:00
※終演時間はあくまでも目安になります
開催場所 EXシアター六本木(EX THEATER ROPPONGI)
出演者
関連リンク http://www.kurokinagisa.jp/lemon/
黒木渚は黒木渚であることを諦めない。
 黒木渚、4年振りのニュー・アルバム『檸檬の棘』が完成した。この4年間に彼女を襲った予期せぬ運命の流転について、ここで要約するには文字数が足りなすぎるので、そのうち彼女自身の言葉で小説になるのを待とう。事実としてリリースとライブ活動は止まったが、黒木渚は文学という表現形態へと進み、『鉄塔おじさん』『本性』『呼吸する町』など話題作を次々と上梓し、新進小説家のステイタスを手に入れた。歌を辞めて小説に専念しようと覚悟した時期もあったという。
だが黒木渚は黒木渚であることを諦めていなかった。彼女の本性である音楽家・黒木渚はまったく休止などしていなかった。むしろ深く静かに新たな金鉱を探して掘り進んでいたことを、このアルバムは見事に証明してくれている。
 収録曲は大きく三つに分けられる。まずは活動休止前にCDと配信でリリースしたシングル「ふざけんな世界、ふざけろよ」「原点怪奇」の2曲。2年前、復活の狼煙として発表したシングル「解放区への旅」とそのカップリング「火の鳥」、同時期に録音していた「彼岸花」。その後の新曲「美しい滅びかた」「ロックミュージシャンのためのエチュード第0章」「檸檬の棘」「Sick」「タイガー」の5曲だ。聴き比べるとわかるが、それぞれ音の質感、歌声、言葉の表現がかなり異なる。
「ふざけんな世界、ふざけろよ」の、終わってる世界を挑発する“チクショーチクショーふざけんな”という陽気なリフレイン。スマホアプリ「デモンズゲート 帝都審神大戦~東京黙示録編~」のために書かれた「原点怪奇」の、レトロモダンで魔的な響き。咽頭ジストニアに苦しむ日々からの解放を“今を生きる”いう力強い言葉で包み込む「解放区への旅」の、不安と希望の絶妙なバランス。“ゆれる運命に復讐を”と怒りの拳を突き上げる「火の鳥」の、自暴自棄にも似た感情の暴発。「火の鳥」の録音は喉の状態が最悪で、それでも歌いきった記録を残したくて録り直しはしなかったという。1曲1曲に刻印された当時の思いは、今聴いても生々しく鮮烈だ。
 そして注目の新曲たち。中でも「美しい滅びかた」「檸檬の棘」の2曲は重要で、11月5日に発表される小説家・黒木渚の新刊『檸檬の棘』と密接な関りを持つ。『檸檬の棘』は自ら私小説と称し、“臆病でひねくれもので繊細な死にたがり”だった黒木渚10代の自伝と言っていい。家族を巡る壮絶なエピソードと、少女の成長物語と呼ぶにはあまりに残酷な、だからこそ深い共感を呼ぶ物語を、アルバム聴いたあとぜひ本を手に取って確かめてほしい。
 切ないほどに美しいピアノと弦を加えたオルタナ・ロック「美しい滅びかた」と「檸檬の棘」に共通するテーマは“いかに死ぬか=いかに生きるか”。家庭崩壊を経験した17歳の黒木渚が出会った、棘があってすっぱくて不格好な檸檬の木。それを人生の象徴として生きた日々と、アーティスト生命をおびやかす病との戦いを経て、“幸せに滅びてゆく”という一節に至る心理描写には、激しく心動かされずにはいられない。休止前よりも透明感と繊細さを増した歌声が、かえって強く心に刺さる。
 「Sick」も小説『檸檬の棘』と間接的に関りある曲で、執筆中にずっと頭の中に流れていた正体不明の音を音像化したものだという。アナログ・シンセを駆使したサウンドはアンビエントなテクノ・ポップのようで、ふわりと明るいメロディで聴き手を誘い込み、どこか暗い狂気をもって聴く者を宇宙の奈落へと突き落とす。アルバムで最もお気に入りの1曲だと彼女は言う。
 「ロックミュージシャンのためのエチュード第0章」には、黒木作品に初参加のゲストがいる。SPARKS GO GOのギタリスト、橘あつやだ。そもそも黒木渚が彼のプレーを見て触発されて書いたという、知性と暴力性を兼ね備えたアグレッシブな楽曲を嬉々として弾きこなす橘あつや。ドラムス柏倉隆史を筆頭に、制御不能で暴走するバンドの荒々しさ。フェイクまみれの世の中を「くたばれ」と罵倒する、エフェクト処理された歌声の激しさ。闘病生活を経ても反骨と独立に彩られた黒木渚のロック・スピリットは不変だ。
 「タイガー」はファンにはお馴染み、一見子供向けのような可愛らしい曲調に、大人の知性をダブル・ミーニングさせる自称「狂ったEテレ」シリーズの最新作。人は誰も心の中に獣を飼っていて、時に代わりに吠えたり悲しんだりしてくれる、それがタイガー。“ぐるるるる”という鳴き声がなんとも可愛くキャッチーで、お子さんのいる方はぜひ聴かせて反応を確かめてほしい。そしてもう1曲の新曲「彼岸花」はアルバム中最もいびつな構成を持つ、唐突なリズム・チェンジとグランジ調の緩急を組み合わせたストレンジ・ロック。歌詞は非常に感覚的で、絶望と希望がアンコントロール状態の中で激突する、言葉のバトルがすさまじい。
 アルバム『檸檬の棘』は、小説家と音楽家とを両立させた今だからこそ作れた、黒木渚の新たなステージの始まりだ。小説で自身の過去をさらけ出すことで、純化された思想が音楽へと流れ込み、「美しい滅びかた」「檸檬の棘」という自伝的名曲や、「Sick」のように無限にイマジネイティブな意欲作が生まれた。小説『呼吸する町』でものにした、宇宙と日常を対比させる遠近法の視点やフラクタル構造の理論も、「美しい滅びかた」をはじめいくつかの曲で見て取れる。
 音楽家から小説家へ転身した者は少なくない。が、どちらも並行させながらライブも含めて総合アートとして確立させた例は稀だ。黒木渚は今そこに挑戦する権利を得た。黒木渚という美しい棘がこの国の文学と音楽を突き刺してセンセーションを巻き起こす、楽しい未来予想図がゆっくりとはっきりと見えてきた。
文 / 宮本英夫
LIVE INFORMATION
黒木渚 ONEMAN LIVE 2020「檸檬の棘」
2020.1.11(SAT)
福岡 DRUM LOGOS
17:00 open / 18:00 start / ADV ¥4,500(+1 drink order)
(問)BEA 092-712-4221(平日11:00〜18:00)
2020.1.17(FRI)
東京 マイナビ BLITZ 赤坂
18:30 open / 19:30 start / ADV ¥5,500(+1 drink order)
(問)DISK GARAGE 050-5533-0888(平日12:00〜19:00)
2020.2.21(FRI)
東京 EX THEATER ROPPONGI
18:30 open / 19:30 start / ADV ¥5,500(+1 drink order)
(問)DISK GARAGE 050-5533-0888(平日12:00〜19:00)
*22歳以下の学生は500円キャッシュバック
(当日キャッシュバック窓口にて、年齢を確認出来る公的証明証、及び学生証をご提示ください)
最終先行抽選受付期間
10月8日(火)18:00〜
10月27日(日)23:59
LINEチケット
イープラス

イベント登録/最終更新履歴

このイベントを編集 / このイベントをコピーして新しくイベントを登録

シェア/共有する

このイベントの感想(0件)

まだ感想はありません。

このイベントに参加(ノート作成)

参加ボタンを押してノートを作成するとイベント費用を管理したり、メモを書いたりすることができます。

このイベントに参加のイベンター(1人)

イベンターノートとあなたのカレンダーを今すぐ連携

参加登録が完了しました

このイベントのノートを編集する

閉じる

日時:

時間:

場所:

出演者:

関連リンク

ハッシュタグ

タイトル:

閉じる