JAM Project LIVE TOUR 2013-2014 THUMB RISE AGAIN 武道館公演

感想一覧(1)

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    意欲作「THUMB RISE AGAIN」を引っさげての全国ツアーの総決算である武道館公演…と言うと聞こえはいいが、ファンのなかには今回のアルバムの出来に否定的な意見もあった。それだけにJAM Project(以下、JAM)がどんなパフォーマンスでファンのネガティブな反応を払拭してくれるか、注目されていたことは間違いない。
    開演は5〜6分遅れただろうか、暗転して最初に現れたのはメンバーではなくステージ左右に陣取ったストリングスセクションの奏者。そして中央の譜面台に指揮者の服部氏。それからメンバーがメインステージに横一列に並んだ。最初の曲はアルバム通り "Groundbreakers"。ここ数年JAMが傾倒してるクラシックなアプローチでステージは始まった。静と動のコントラストによってより深い表現をしたいということだろう、「静」にあたるクラシックやオペラなどのクオリティは年々、明らかに向上している。それをファンが望んでいるかは知らないが、とにかくJAMは彼らの主戦場であるロックとは逆位相の音楽性の魅力を増しているのだ。そして流れるようにアルバムタイトル曲"Thumb Rise Again"へと繋ぎ、一気にロックモードへシフト。会場は沸き立っていたが、この曲中、すでに仕事を終えたストリングス奏者たちが退場するのが丸見えで、私は終始気になってしまった。この曲でストリング奏者を用意したのは武道館公演だけということだが、曲中は待機させて曲後の暗転時に退場するなどもうすこし演出と進行に配慮が欲しかった。
    その後はアルバム収録曲を中心にプレイしたが、"鋼のレジスタンス"、"未来への咆哮"など人気曲も織り込んで新旧ファンを満足させるセットリストが続いた。すると終盤、アルバム収録曲中最も悪名高い"Amor~とある男の物語~"を披露。初見だったが、ほんとに「なんなんだこれは?」という感じ。シルクハットとタキシード風衣装に身を包んだ男性陣は珍妙なステップを踏みながら歌い、奥井雅美は妖艶なドレス姿でステージを舞う。サウンドはタンゴのリズムでドゥーワップ系スキャットを多様していて、ミュージカルのような構成。これをJAM Projectでやる必要があるのだろうか。あるいは、こういう曲を書かなければいけないくらいマンネリズムは深刻なのだろうか。音楽性を広げるのは結構だが、個人的にはまったく守備範囲外だったので面喰らったという印象でこの曲は終わった。
    しかし次の曲が汚名返上と言える出来だった。福山芳樹作曲、影山ヒロノブ作詞として紹介された"R.I.P〜友よ静かに眠れ〜"。これは『宇宙戦艦ヤマト2199第六章』(映画?)のEDだということだが、こういうダイナミズムのあるバラードは今までJAMのレパートリーにありそうでなかったように思う。曲の良さと相俟ってとても素晴らしいパフォーマンスだった。そして次の"守護神 -The guardian-"ではイントロ中に影山の紹介でヒカルド・クルーズが登場。そして、パーティーロックソングと言える"侍パーリー"へ繋いだ。観客は待ちかねていたように一斉に公式アイテムの扇子を広げ、会場のボルテージは最高潮。ここから一気に畳み掛ける黄金リレーが始まり、"Rocks"、"Gong"、"Victory"、"レスキューファイヤー"と続けた。ヒカルドを含む6人編成での珠玉の名曲4連発はやはり凄い。凄くないわけがない。この4曲のためにチケット代を払ってもいいと思えるほどだ。はっきり言って、過去の遺産が素晴らしすぎるからJAM Projectはわざわざ新曲を作らなくてもいいのだ。わざわざ過去の音楽性と異なる曲をひねり出して忠実なファンを失望させる必要などないのだ。私はこの時点で"Rocks"より前に聴いた曲などすべて忘れてしまったかのよな感覚だった。
    一度ステージを去ったJAMメンバーとヒカルドだったが、1stアンコールを受けてJAMメンバーだけがステージに戻りアルバムから"Viva My Life"を披露。アコースティック調でほのぼのとする曲だ。メンバーは観客にクラップを促し、会場全体が明るい気持ちになった。この曲を終えるとまたすぐにメンバーはステージを去ったが、あの曲をやっていない。これで終わるはずがない。誰もがそう思っていた。そして2ndアンコールで戻ってきたメンバーが始めたのは、もちろん、"Skill"!!このアニソン・ゲーソン界の頂点に君臨する絶対的アンセムはどれだけ年月が過ぎても色褪ることがない。おなじみのきただに部長によるコール&レスポンスは『お・も・て・な・し』だった。まったく意味不明だが、そんなことはどうでもいいくらい観客のテンションは上がっていた。今回唯一いつもと違っていたのは、曲の最後のスローになるはずのパートに、そのままアルバム最後の曲"Long Way To Go"を続けたことだ。まぁここまでやり尽くしたらアウトロがなんでも構わないし、アルバム曲が最後を飾るというのは「THUMB RISE AGAIN」ツアーとしては妥当だろう。全セットリストを終えて、影山はスタッフと観客へ感謝の意を伝えて武道館公演を締めくくった。
    さて、冒頭で述べたネガティブな反応の払拭だが、あの全力の"Skill"を聴いたあとに野暮なことが言えるはずもない。JAM Projectのライブは相変わらず最高で最強だ。それが確認できたのだからそれでいい。考えるのをやめよう。ライブのあとの寿司とビールがうまかった。

    パーマリンク  3739日前

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